HACCP、ハセップ、危害分析及び重要管理点、総合衛生管理製造過程承認制度 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Hazard
Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとったもので食品の衛生管理システムの国際標準である。 和訳は「危害分析及び重要管理点」が一般的で、略してハサップ又はハセップと呼ばれる。 |
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従来は「食品の安全性」とは、製造する環境を清潔にし、きれいにすれば安全な食品が製造できるであろうとの考えのもと、製造環境の整備や衛生の確保に重点が置かれてきました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
そして、製造された食品の安全性の確認は、主に最終製品の抜取り検査(微生物の培養検査等)により行われてきました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
抜き取り検査だけの場合、危険な食品が、市場に出て食中毒を引き起こす可能性を排除することができません。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
これに対してHACCP方式は、これらの考え方ややり方に加え、原料の入荷から製造・出荷までのすべての工程において、あらかじめ危害を予測し、その危害を防止(予防、消滅、許容レベルまでの減少)するための重要管理点(CCP)を特定して、そのポイントを継続的に監視・記録(モニタリング)し、異常が認められたらすぐに対策を取り解決するので、不良製品の出荷を未然に防ぐことができるシステムです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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上図HACCP方式各工程で、確認と記録をとるだけでなく、熱処理を重要管理点(CCP)として、その殺菌温度・時間を連続的に監視する。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
HACCPは1960年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の方式です。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この方式は国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)の合同機関である食品規格(Codex)委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
わが国では1996年に腸管出血性大腸菌O157による大規模な食中毒が発生して以来、広く注目されるようになった。 現在、世界各国の取り組みはそれぞれの事情により異なる。 米国では水産食品及び食肉製品に、EUでは水産食品に義務化されたHACCP規則がある。 |
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我が国では、1996年5月に食品衛生法の一部を改正し総合衛生管理製造過程(製造または加工の方法及びその衛生管理の方法について食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造、または加工の工程)の承認制度が創設され、1996年5月から施行されました。総合衛生管理製造過程では、乳・乳製品、食肉製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品、魚肉ねり製品、清涼飲料水の5つの食品群が承認対象として政令指定されている。 この制度は任意制度であり、希望者は厚生省に申請し、書類審査、現地審査を経て承認される。(平成18年9月:577施設承認) HACCPシステムは、原材料の生産から、製造・加工、流通、更に調理・消費に至る食品の各段階に適用できることから、多くの加工食品、外食産業、大量調理施設などへの自主的な導入が進んでいる。 |
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また、1998年5月10日、HACCP方式を導入する企業へ低利融資や税制上の優遇措置を盛り込んだ「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(いわゆるHACCP手法支援法)」が5年間の時限法として制定され、その後平成15年6月に更に5年間延長する改正法が公布されました(7月1日施行)。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ハザード HACCPシステムで管理しようとするハザード(危害原因物質)とは、食品中に存在することにより人に健康被害を起こすおそれのある因子で、次の3つに分類される。 生物的危害原因物質 食品中に含まれる病原細菌、ウィルス、寄生虫の感染又はそれらの体内で産生する毒素などが挙げられる。代表的な食中毒細菌として、サルモネラ、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌O157、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、カンピロバクターなどが挙げられる。寄生虫としては原虫類、鮮魚介類に多いアニサキス、旋尾線虫、裂頭条虫、大複殖門条虫のような蠕虫類、その他獣生肉に由来する肺吸虫、旋毛虫などがある。ウィルスでは小型球形ウィルス(SRSV)、肝炎ウィルスなどがある。 化学的危害原因物質 食品中に含まれる化学物質による疾病、麻庫又は慢性毒性の健康被害をもたらす可能性のある物質をいう。自然に存在する化学物質としてアフラトキシンのようなカビ毒、サバやイワシなどある種の魚中のヒスタミン、フグ毒、貝毒、毒キノコ、アレルゲンなどが考えられる。また食品添加物も食品衛生法に定められた適切な使用条件が守られない場合には化学的危害原因物質に成り得る。さらに環境汚染物質、残留農薬や、食品工場内で使用する洗剤、消毒剤、潤滑油なども挙げられる。 物理的危害原因物質 通常は食品中には存在しない異物で、その物理的な作用による健康被害をもたらす可能性のある物質をいう。瓶や照明器具などの破損に由来するガラス片、原材料に含まれたり機械装置から混入する金属片、あるいは硬質プラスチックの破片などが対象となる。 |
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HACCPの7原則12手順 コーデックスのガイドラインに示されている。原則2)から原則7)までを「HACCP計画(プラン)」という文書にし、計画どおり実行しなくてはならない。 またその前提として経営者の十分な理解と方針の明確化が欠かせない。 1.専門家チームを編成する、 2.製品の仕様、特性について記述する、 3.食べ方、使用法について確認する、 4.製造工程をフローダイヤグラムに書く、 5.製造工程を現場で確認する、 6.危害分析(Hazard Analysis 原則1)を行う、 7.重要管理点を決定する(CCP Critial Control Points 原則2)、 8.管理基準を設定する(CL、Critical Limit 原則3)、 9.モニタリング方法を設定する(Monitoring 原則4)、 10.改善措置の方法を設定する(Corrective Action 原則5)、 11.検証方法を設定する(Verification 原則6)、 12.記録の維持管理方法を決める(Record-keeping and Documentation 原則7)。 |
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危害分析(原則1) 原材料及び製造工程における潜在的な危害原因物質を製造工程一覧図に沿って列挙する。 列挙した潜在的な危害原因物質が引き起こす健康被害の起こり易さや起こった場合の程度を明らかにする。 さらに各々の危害原因物質のコントロール方法を明らかにする。 |
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CCPの決定(原則2) 重要な危害原因物質をコントロールできて、なおかつ必須の手順、操作、工程をCCPとし、原材料の生産と受け入れ・製造加工・貯蔵等の食品製造の全過程における適切な箇所に設定する。 危害原因物質のコントロールには、危害原因物質を除去、予防および許容できる範囲まで低減することが含まれる。たとえば1)加熱により、細菌、ウィルスを死滅させる、2)病原細菌の増殖を冷蔵又は冷却により予防する、3)目視検査や手作業選別で異物の混入を低減させるなどである。 |
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管理基準(CL)の設定(原則3) 危害原因物質を管理する上で許容できるか否かを区別する指標(パラメータ)の基準を設定する。 適切なCLを決めるためには、工程の温度や時間、装置内の温度分布の測定、微生物検査を実施するなど科学的な根拠が必要である。 またリアルタイムに管理状態を把握するため、迅速で連続的に読み取れる指標を用いる。 たとえば温度、時間、pH、水分活性、塩分濃度、糖度などを用いることが多い。 |
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モニタリング方法の設定(原則4) CCPが正しくコントロールされていることを確認するとともに、後に検証できる正確な記録をつけるための方法を決める。 |
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改善措置の設定(原則5) CCPをモニタリングしていて指標がCLを超えてしまったとき、すなわち重要な危害原因物質が適切にコントロールされていないときに行う措置を設定する。 HACCPシステムではCLを逸脱した製品をそのまま出荷してはいけないので、再加熱、用途変更あるいは廃棄することなどが求められる。 事態に際し迅速に対応するため、この措置はあらかじめ決めておく。 |
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検証方法の設定(原則6) HACCPシステムがプランに従って行われているかどうか、HACCPプランに修正が必要かどうかを判定するために実施する。 モニタリングに用いる計測器の校正、モニタリング記録と改善措置記録の点検、モニタリングの現場確認・最終製品の試験検査などが含まれる。 その他、類似の食品群で新たな食中毒の発生が起きたとき、製造ライン、製造方法または原材料等を変更したときなどにシステム全体を見直す。 システムに欠点や不備が見つかったときは、HACCPプランを修正し、よりよいプランにして行くことができる。 |
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記録のつけ方と保存(原則7) 正確な記録を保存することはHACCPシステムの本質である。 この記録はHACCPシステムを実行した証拠であると同時に、万が一、食品の安全性に係る間題が生じた場合でも、製造又は衛生管理の状況を遡り、原因追究を容易にすることができる。 製品の回収が必要な場合には、原材料、包装資材、最終製品等、ロットを特定する助けとなる。 そのため、正確な記録の付け方と保存方法をあらかじめ決めておかなくてはならない。 |
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一般的衛生管理プログラム HACCPシステムを効果的に機能させるためには基本的な施設設備や従業員の適切な管理が必要である。 作業手順を明らかにして文書化し、さらに衛生管理の実施状況を確認してその記録を残すことが要求される。 厚生省の総合衛生管理製造過程の承認制度では次の項目が対象となっている。 施設設備、機械器具の衛生管理 施設設備、機械器具の保守点検 従事者の衛生教育 そ族昆虫等の防除 使用水の衛生管理 排水及び廃棄物の衛生管理 従事者の衛生管理 食品等の衛生的な取扱い 製品の回収方法 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検 |
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(資料) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
農林水産省総合食料局食品産業企画課技術室 「HACCP手法支援法ホームページ」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(社)日本食品衛生協会 「食品の安全を創るHACCP」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(社)日本食品衛生協会 「食品の安全を創るHACCP HACCPプラン作成ガイド」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
財団法人食品産業センター | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
http://www.shokusan.or.jp/haccp/basis/index.html |